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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(れ)123号 判決 1952年11月18日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人美村貞夫の上告趣意は末尾添附の別紙記載のとおりである。

上告趣意第一点について。

所論納得ずくで関係したというが如き主張は、強姦致傷罪の構成要件たる暴行脅迫の単なる否認であって、旧刑訴三六〇条二項にいわゆる犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張に該当しないものというべきであるから(昭和二四年(れ)第九〇九号同二五年九月二一日第一小法廷判決参照)、原判決がこの点につき特に判断を示さなかったからといって、これを違法視することはできず、かかる違法が存することを前提とする所論判例違反の主張も亦既にその前提において採るを得ない。

上告趣意第二点について。

しかし、記録によると、原審で弁護人より証人申請のあった所論被害者田中みどりは、検察庁で取調べを受けた後その住所が判明せざるに至った為め、原審では遂にこれが尋問を為すことができなかった事情が窺われるから、かかる場合には所論聴取書の如き書面もこれを採証することが許されるものといわなければならず(昭和二四年(れ)第一二五九号同年一二月二四日第二小法廷判決参照)論旨引用の判例は、本件に適切でなく、論旨はすべて採用できない。

また記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 木村善太郎)

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